日本酒の造り方(作り方)をご存知でしょうか?
日本酒はお米・麹・水を原材料に、日本特有の伝統的な製法で造られる醸造酒。
近年では若年層にも親しまれ、日本酒ブームが訪れるなど人気が高まっています。
本記事では日本酒を造る(作る)工程や醸造法などを解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。
- 白鶴酒造オンライン編集部
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日本酒を"つくる"という場合に使用する漢字は、「作る」ではなく「造る」が正しい表記です。
「造る」は工業的に製造する場合など規模が大きいものに、「作る」は抽象的なものを作る場合や規模が小さいものに用いられます。
日本酒は酒造会社でしか造ることができないため、前者の「造る」を使用します。
本記事では、一般的にインターネットでは「作る」で検索されることが多いため、あえて「造る(作る)」と併記しています。
日本酒の造り方(作り方)や製造工程を解説
日本酒の造り方(作り方)についてご紹介します。
原材料であるお米と水が日本酒になるまでにはさまざまな工程があり、時間をかけて丁寧に造りあげられます。
ここでは、それぞれの工程を詳しく解説します。
精米
日本酒造りの一番最初の工程は「精米」です。
精米とは、玄米の外側の茶色い部分を削って白米にすることを指します。
玄米の外側にはタンパク質・脂肪・無機質・ビタミンが多く含まれています。これらが多すぎると日本酒の雑味成分となり、酒質劣化の原因となるのです。
そのため、酒造用の白米は主食用の白米よりもたくさん削る必要があります。
玄米をどのくらい磨いたのかを表す数字が「精米歩合」です。
精米歩合60%と記載されている日本酒は、お米の表面の40%を削っているということを表します。
日本酒の種類によって精米歩合が異なり、吟醸酒では精米歩合60%以下、大吟醸酒では精米歩合50%以下のお米を使用しています。
洗米、浸漬(しんせき)
精米したお米を洗う作業が「洗米」です。
お米の表面には精米した際の糠(ぬか)が付着しているため、水でこれらを洗い流します。
洗米のあいだにもお米同士が擦れることにより表面が削られるため、二次精米の役割もあります。
現在は機械での洗米が可能になりましたが、大吟醸酒のように高度に精米したお米を使用して日本酒を造る際は、手作業での洗米が主流です。
洗米が終了したら、お米に水を吸わせます。これが「浸漬(しんせき)」です。
吸水具合によって蒸した時のお米の状態が変わってくるため、水を吸収させる時間管理が重要となります。
酒造用の白米は主食用よりもたくさん削っているため吸水のスピードが速く、たった数秒の違いでもお米の吸水具合が変化してしまいます。
お米の品種やその年の出来具合・精米歩合・気温・湿度も影響するため、それぞれにあった時間管理が必要です。
蒸米
大きな釜の上に甑(こしき)と呼ばれるせいろを乗せて、お米を蒸します。これを「蒸米」といいます。
食用の場合はお米を水に漬けたまま熱をかけて炊きますが、酒造用のお米はしっかり水を吸わせた後に蒸すことで、外側は適度な硬さを保ちつつ、内側はふっくら軟らかい「外硬内軟(がいこうないなん)」の状態にします。
蒸米の工程によってお米のデンプンが変性され、麹菌の酵素の作用を受けやすくなります。また、白米の殺菌も蒸米の目的のひとつです。
蒸したお米は放冷した後、それぞれ麹や酒母、醪用として使われます。
製麴(麹造り)
酒造用の麹を造る工程が「製麴(せいぎく)」です。
昔から酒造りには「一麹、ニ酛(もと)、三造り」という言葉があるように、麹は日本酒造り(作り)においてもっとも重要な役割を担っています。
日本酒は、ただお米を蒸して水と混ぜておくだけではお酒にはならず、酵母がアルコール発酵できるようにお米のデンプンを糖に変える必要があります。これを行うのが麹菌の役割です。
また、麹菌はタンパク質を分解しアミノ酸を生成します。旨み成分であるアミノ酸は日本酒の味わいに大きな影響をもたらすのです。
麹は、蒸米に麴菌を繁殖させて作ります。
麹菌は高温・多湿を好むため、40℃前後に調整された部屋で約2日間かけてゆっくりと菌糸を繁殖させます。
現在は製麹機と呼ばれる機械で作ることが多いですが、高品質な大吟醸酒を造る場合は麹室(こうじむろ)と呼ばれる特別な部屋で、手作業で麹を造ります。
酒母(しゅぼ)
「酒母(しゅぼ)」とは文字通り「日本酒の母」ともいえる、日本酒造り(作り)において非常に重要な工程です。
昔は「酛(もと)」と呼ばれており、日本酒造り(作り)の重要な工程を指す「一麹、ニ酛、三造り」という言葉に出てくる「酛」とは酒母のことを指しています。
酒母はアルコール発酵に必要な酵母を大量に培養させるためのものであり、蒸米に麹・酵母・水・乳酸菌あるいは乳酸を加えて造ります。
乳酸の働きによって酒母は強い酸性に保たれるため、雑菌による汚染を防止しつつ酵母の増殖が可能となります。
酒母に必要な乳酸の由来によって、「生酛系酒母(きもとけいしゅぼ)」と「速醸系酒母(そくじょうけいしゅぼ)」の大きく2種類に分かれます。
生酛系は昔ながらの製法で、酒蔵に自然に生息する乳酸菌を繁殖させて造り、約1ヶ月かかります。
速醸系は乳酸を最初に投入する方法であり、約2週間ほどかかります。
速醸系の方が短期間で一定の品質の酒母が造られるため、現在もっとも広く採用されている方法です。
醪(もろみ)造り
酒母に蒸米・麹・水を入れて仕込み、発酵させたものを「醪(もろみ)」といいます。
醪造りは、上記の原料を3回に分けて入れる「三段仕込み」という方法で、4日間かけて進められます。
一度に大量の原料を酒母に投入すると、酒母の中にある酵母や酸が薄められることで酵母の繁殖が間に合わず、雑菌が繁殖してしまう恐れがあるためです。
初日の「初添」ではタンクの中に酒母・蒸米・麹・水を投入。
2日目の「踊り」ではなにも入れません。一日休み、酵母を繁殖させます。
3日目の「中添」では初添で入れた2倍の量になるように原料を投入し、4日目の「留添」では中添の2倍になるように投入というように、次々と倍量の原料を追加して仕込みます。
三段仕込みが終わった後は温度調整をしながら、約1ヶ月ほどかけて醪を発酵させます。
上槽(搾り)
発酵が終了した醪(もろみ)を圧搾機にかけて搾り、日本酒と酒粕に分けます。この工程が「上槽」です。
通常のお酒はアコーディオン状の自動圧搾機に醪を入れ、両側から圧力をかけてお酒を搾ります。
しかし、繊細な味わいを特徴とする大吟醸酒といった高級酒は、なるべく圧力をかけずに上槽したいため、酒袋に醪を入れて吊るし、垂れてくるお酒のみをとる「袋吊り」という方法で搾ります。
ろ過、火入れ
上槽後の日本酒は溶け残った米や酵母などの小さな固形物を含んでいるので、これを取り除くためにろ過を行います。
ろ過したお酒は加熱処理をします。これが「火入れ」です。
微生物を殺菌したり、お酒に含まれる酵素の動きを止めることで風味を落ち着かせ、品質の劣化を防ぎ保存性を高めます。
火入れを行わないお酒は「生酒」や「生貯蔵酒」と呼ばれ、搾りたてのフレッシュな味わいを楽しめるのが魅力です。
貯蔵
通常の日本酒はすぐに瓶詰せずに、一定期間タンクで貯蔵します。斗瓶と呼ばれる瓶に日本酒を入れてから貯蔵する「斗瓶囲い」という方法もあります。
搾りたてのフレッシュな風味は貯蔵している間に落ち着き、貯蔵期間が長いほど熟成されて深みや旨みが増します。
熟成には温度や光といった外からの要因や、日本酒の中に含まれる成分の反応などの要因が関係し、貯蔵環境によって酒質が大きく左右されます。
その中でも特に温度の影響が大きく、お酒の色や味・香りに影響するため、貯蔵の際は温度管理が一番重要です。
銘柄によって適切な温度は異なるため、それぞれの酒質に適した環境での貯蔵が必要です。
生酒の場合は火入れを行っていないため微生物や酵素の働きも完全には止まっておらず、管理環境によっては酒質の変化・劣化が起こりやすいのが特徴です。
そのため、生酒においては冷蔵室や冷凍室で貯蔵する酒蔵もあります。
調合・割水
貯蔵した日本酒の成分値や味わいをもとに、複数のタンクのお酒をブレンドします。これを「調合」といいます。
調合した日本酒に水を加え、アルコール調整を行うことを「割水」といいます。
アルコール度数の調整だけでなく香味のバランスを整えたり、製品の均一化を測るのが目的です。
同じ原材料・醸造方法で製造しても、実際にできあがるお酒の風味は少しずつ異なるため、調合・割水の工程を経て、最終的に目指している酒質・風味に仕上げます。
割水を行わないお酒は「原酒」と呼ばれます。
容器詰め
日本酒造り(作り)の最後の工程が「容器詰め」です。
瓶やパックを洗う作業からはじまり、充填・ラベリング・箱詰め等をして出荷されます。
通常のお酒では充填の直前に2回目の火入れを行って殺菌するため、熱い状態のお酒をそのまま瓶に充填します。
充填後すぐに冷却することで、品質の劣化を防ぎます。
日本酒造り(作り)に適したお米とは?食用との違いを解説
日本酒造り(作り)に適したお米と、普段の食事の際に食べているお米は異なることをご存知でしょうか?
ここでは、日本酒を造る(作る)のに向いているお米の特徴や品種についてご紹介します。
食用米と酒米の違い
日本酒造り(作り)に適したお米を「酒造好適米」といいます。
酒造好適米は、食用のお米と比べると大粒であり、低タンパク・低脂肪が特徴です。
日本酒造り(作り)で使うお米は、食用のお米と比べてまわりを削る分量が多くなるため、大粒で砕けにくいことが重要となります。
また、酒造好適米はお米の中心部分にある「心白(しんぱく)」が大きいのも特徴の一つです。
心白はお米の中心にある白濁している部分で、周りと比較してデンプンの密度が低いため、麹菌が菌糸を伸ばしやすくなります。そのため、心白のあるお米を使うと糖化力のある麹を造ることができます。
低タンパク・低脂肪である点も、日本酒造り(作り)において重要です。
タンパク質は分解されるとアミノ酸に変化し旨みのもととなりますが、多すぎると発酵のバランスが崩れてしまい雑味の原因にも繋がるのです。
脂質は多すぎると日本酒らしい香気成分の生成を邪魔してしまいます。
そのため、タンパク質・脂肪分の少ないお米が、日本酒造り(作り)には適しているといえます。
代表的な酒造好適米
酒造好適米には、さまざまな品種があります。
特に有名な品種が、全国的にもっとも多く生産されている「山田錦」、新潟県をはじめとする北陸地方を中心に栽培される「五百万石」、主に長野県で造られる「美山錦」、江戸時代発祥の日本最古の酒米とされる「雄町」です。
近年では全国の酒蔵がそれぞれに適した酒米を開発・栽培しており、白鶴では山田穂と渡船2号を掛けわせた「白鶴錦」を開発しました。
白鶴錦で造られたお酒は繊細でふくらみのある味わいとなります。
醸造酒の3つ造り方(作り方)を紹介。発酵手順の違いを解説
日本酒は、原材料を糖化して発酵させて造る醸造酒のひとつです。
同じ醸造酒の仲間にワイン・ビールなどがありますが、ひとくくりに「醸造酒」といってもお酒の種類によって造り方(作り方)は異なります。
ここでは、醸造酒の3つの製造方法をご紹介します。
並行複発酵を行う日本酒
「並行複発酵」とは、糖化とアルコール発酵を同時に行う方法です。
並行複発酵酒の代表が日本酒です。
日本酒を造る(作る)際、お米に含まれるデンプンを麹によってグルコースに糖化し、そのグルコースを元に酵母がアルコール発酵します。
ひとつのタンクのなかで2つの工程が同時に行われているのです。
中国の紹興酒も、日本酒と同じ並行複発酵酒です。
単行複発酵のビール
「単行複発酵」とは、まずは原材料に含まれるデンプンを糖化し、その後酵母を加えてアルコールを発酵させる方法です。
「糖化」と「発酵」を同時ではなく、順番に行うのがポイントとなります。
単行複発酵酒の代表といえるのがビールです。
最初に原材料である麦に含まれるデンプンを麦芽の酵素で糖化し、できた麦汁に酵母を加えて発酵させます。
単発酵のワイン
「単発酵」は、もともと糖分が含まれる原材料を用いる際に行われる方法です。
単発酵酒の代表はワインです。
原材料である果実(ブドウ)に糖が含まれているため、糖化の工程が必要ありません。
酵母を加えるだけでアルコール発酵が進み、お酒となります。
ワインのほかに、りんごを使って造るシードルやはちみつが原材料であるミードなども単発酵酒に含まれます。
日本酒の造り方(作り方)を理解してさらに日本酒を楽しもう
今回の記事では日本酒の造り方(作り方)について解説しました。
想像をはるかに超える時間と手間がかかっていることに驚いた方も多いのではないでしょうか。
日本酒の造り方(作り方)を理解することで、日本酒を購入する際に商品説明欄の内容をより理解できるようになり、好みに合った商品を探しやすくなるでしょう。
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低温下で袋吊りを行うことで、林檎や洋梨のようなフルーティーな香りとともに、「山田錦」からもたらされるシャープで繊細な味わいを余すことなく引き出しています。
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白鶴オンラインショップではさまざまな種類の日本酒を販売しています。
こだわりの製造方法で時間をかけてじっくり造った(作った)日本酒を、味わいの違いも感じつつ、ぜひご自宅で楽しんでみてください。